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「しゅーりょう!」
何かを吸い取ったとしか思えないほど、タイザーの頬は高揚し、艶めいていた。タイザーがもっとも輝かしい顔を見せるのはこの瞬間なのだが、まさかデザートシーブスを倒した後とはだれも思わないだろう。幼い笑顔が花を咲かせる。
「ごめんなさい、タイザーちゃん。私、撃てなかったわ」
「それでいいと思うよ」
タイザーは少しだけ視線をずらすと、ちらちらとイツキとレイティナ、交互に見やる。レイティナは再び穏やかさを取り戻すと、タイザーの頭を撫でた。
「イツキさんでもよかったといえばよかったけど。でも」
レイティナは続けなかった。笑って頭を撫で続ける。タイザーは何も言えず、ただ上目にレイティナを見た。深い瞳がどことなく違って見えたのは、タイザーの気のせいだろうか。
「街に帰るわ。銃、返しておくね。ありがとう、タイザーちゃん。私に付き合ってくれて」
「するのか?復讐ってやつ」
「さあ?でも、殺すのはやめた。もっと、残酷な方法にしようかなって考えてるところ」
「おー、こわ」
そう言いながらもイツキはにやけている。レイティナはようやく指を離すと、肩をすくめた。
「二人はどこに行くの?」
「さあな」
イツキはタイザーに視線を落とし、タイザーはイツキを見上げる。そしてほぼ同時に、青い空を仰いだ。今日も真っ青に澄み渡っている。
「青い鳥がいる所、だろうな」
「ブルーヘブンを見つけるんだ」
「……変な二人ね。じゃあ、私はお先に。お騒がせしました」
行儀よく頭を下げるレイティナはやはり現実味がなく、しかし見せた笑顔はどことなく、晴れやかだった。そのまま三人は背を向け合い、それぞれの道へ進んだ。レイティナには現実が、イツキとタイザーには青い鳥が目の前に広がる。
「あーあ。もう」
「なんだ、いきなり」
「なんだ、かぁ……。僕だってよくわかってないし、答えれないけど……。うん、なんか久しぶりだね、いっきー」
昨日の言葉よりも軽く、顔は幼い。それでも幾分か覇気なく笑い、息を吐いた。
「苦手だったな。あの人」
「そりゃそうだろうな」
タイザーは傾げたが、イツキは黙る。まさかストレス発散の材料にされてたなどと言えるはずがないし、言えば銃が飛び交う。レイティナの姿はもうどこにもない。元凶はいない、となるとその鉛玉はイツキを攻撃するだろう。
「にしても、見事に振られちまったなー。俺じゃだめらしい。性格さておき、久々にいい女だったのにな。残念」
「ふん、だ!今から追いかければ!」
「去る者追わずってやつさ」
「嘘ばっか!ミレンたらたらだよ!へんったい!」
「まあなぁ。やっぱ、二度三度四度五度くらいやっときゃよかったなー、と後悔中。つーことで、代わりに慰めてくれる?」
タイザーはきょとんとまばたき、
「頭撫でればいいの?」
「んーあー……」
純粋に答えられては返しようがない。イツキは自滅した事を知り、頭をかいた。誰かがいたら、レイティナがまだいたとしたら、からかうどころかねちねちと苛められそうだ。
「街に戻るか?」
「ううん。このまま違う街に行こうよ!次の街こそ、ブルーヘブンがいるかもしれないよ」
タイザーは空のように晴れやかに笑うと、イツキの腕を引っ張った。
おわり
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