33・untied 羽ばたく音が耳について離れない。 馬鹿だ馬鹿だと罵りながら、あれはやって来る。 追いかけられ、追い求められ、人々は救済の手を伸ばして掴み取ろうとする。 吐きそうなほどの手、手、手。泥沼に沈みそうな人々の願い、願い、願い。 それでもあれは、笑っている。嬉しそうに。 招待し、歌う。 「追いかけて、馬鹿な人」 愚かな人が大好きです。 貪欲な人が大好きです。 傲慢な人が大好きです。 飢えた人が大好きです。 どこまでも、いつまでも。 涙に濡れたその姿。 ブルーヘブン。 それが名前。 みんなが求めた、姿。 触れてはいけない、幻の姿。 Heaven? ずっと誰かが泣いている。ずっと誰かが歌っている。とても美しくておぞましい声。粘着質で、聞けば聞くほど糸を引いて離れようとしない。もがけばもがくほど絡まっていく。 なのに心地よかった。それは求めたものの声だからだろうか。それとも青い鳥の声。 手を伸ばそうとして、やめた。きっとこれは夢で、求めているものではないから。 もっと現実のものが欲しい。でもそれはわからない。だから青い鳥を求め・・・・・。 「いっきー」 瞬間、意識が引っ張られた。スイッチを押したようにカチリと景色が変わり、イツキは目を開けた。瞼は重く、そこはまた白い天井があった。何度も見た景色だというのはわかっているのに、自分の体がどこにいるのかわからない。 「あ、起きた?」 視界の隅から茶色い髪が飛び出て頬をくすぐる。太陽の匂いがした。 「んあ・・・・・・・?」 わかっているのに、それが誰だか確認したくて体を起こそうとした。だが残念なことにそれだけでめまいがして視界が歪んだ。 「ちゃんと寝てないとだめだよー」 小さな手が、起きあがるイツキの体を無理やり押し倒す。イツキは枕に再び埋もれ、2、3度瞬きを繰り返した。浮遊感は消え、視界の歪みもなくなった。 ゆっくりと目玉を動かす。隣にちょこんと、タイザーが覗きこんでいた。相変わらずくせの強い髪がぴょこんと跳ね、丸い瞳に光がきらきらと映り込んでいる。間違いないその姿にイツキは息を漏らした。現実感が急速に体に頭に戻ってくる。 「ここ・・・・・・・病院か?」 「そうだよ。もー大変だったんだよ!いくらやせてても、いっきーの体、重かったんだからね」 「??」 ゆらりと水面に思考を浮かばせる。 小さな体を潰しながら泣き言を言って、糸が切れた。そうだ、眠っちまったんだっけ、とぼんやり思った。 いくら苦しかったとはいえ、何を考えていたんだ。子供にぶつけて痛みを和らげようなんて。少しでも救われようなんて、どうかしている。本当に、どうにかしている。 「かっこわりぃ・・・・・・・」 つぶやいて、やれやれと長い息をつく。そのくせ胸の中は信じられないほど穏やかで、やっぱりどうにかしているとイツキは内心自嘲した。でも今はそれ以上深いところまで考えれない、考えたくなった。 「いっきー、大丈夫?あのね、先生が起きたらこれ飲めって。えいよー剤だよ」 「ん」 3種類の錠剤を受け取ると、少し顔を上げて口に放り込んだ。 「水くれ」 「はい」 イツキはコップを受け取ると、一気に薬を流しこんだ。その姿を見てタイザーは安堵の息を密かに漏らし、じっとイツキを見下ろした。 「えっと、それでね。今日一日ここにいれば退院できるって」 「そうか・・・・・・」 「あとね、あとね」 「まだあるのか?」 「うん、うん」 タイザーは何度も頭を下げると、少し顔を近づけた。 イツキは改めて彼女の顔を確認する。目の周りは真っ赤にはれてはいるものの、もう泣く気配はない。きらきらと輝く顔は元気そう見える。あれだけ泣いていて喚いていた顔がうそのようで、憑きものでも落ちたように鮮やかなものになっていた。 やはりタイザーは元気が一番似合う。 「・・・な、何にやにやしてるの?僕の顔、何かついてる?」 「いんや、別に・・・・。それで?」 「えっとね・・・キシュリーねーちゃんと9thのお姉ちゃんも来たよ」 「・・・・・は?」 単語を聞くなり、頬が勝手に引きつった。起きぬけにその二人の名前は刺激が強すぎる。 きょろきょろと見回すが、いる気配はない。二人とも職業柄、きっちり気配を消すことができるがイツキは微妙にそれを察知することができる。・・・密かな特技だ。 どうやら今は完全にいないようだ。よかったと心の底からイツキは息を吐いた。 「・・・・で?なんだって?」 「雨の日に捨てられた黒猫みたいって言ってた」 瞬時にその光景が浮かんだ。浮かべたくなかったのに、あまりにリアルな表現で。 細い雨に濡れ、餌ももらえず、かといって仲間には歯を向けられ、仕方がなくゴミ箱を漁るやせ細った猫。その体にはうっすらあばらが浮いて、足を引きずって・・・・。 「ひ、ひでえ・・・・・・」 あまりに悲壮な光景に思わず泣きたくなる。 タイザーはおもしろそうに笑い「ぴったりだね」と追い討ちをかけた。自分でも思っていたので、改めて口にされるとさらにがつんとくる。 「ったく・・・・余計な御世話だってんだ・・・・・何しに来てるんだか・・・・」 「まだあるよ。ええと、それでね」 笑顔が少し消えた。かといって悲しい顔をしてもいない。どうしていいのか、困ったような顔になる。 「もう一個」 「何だ?俺を攻撃するような言葉だったら控えてほしいんだが・・・・」 「違うよ。えっと、僕、よくわからないんだけど・・・・ドラッグコントロールはね、ブルーヘブンの詮索をやめたんだって」 「・・・・・どういうことだ・・・・・・?」 タイザーは静かに首を振る。詳しいことは聞かされていないようだ。 「打ち切り・・・・・・・」 真っ白な天井を仰ぐ。 ブルーヘブンの検索の打ち切り。つまりは中断しなくてはいけない状態になった。それは見つかったことを示さない。打ち切ったということをわざわざ言いに来たということは即ち、もう検索はしてはいけないということだ。 何が起こったかわからないが、ブルーヘブンは触れ低はいけない秘密の扉となったわけだ。 ブルーヘブンがドラッグコントロールの「何か」に触れたことは確かだろうが、向こうは「麻薬」絡みで追跡していた。麻薬で秘密機構に触れるなど、まずない。イツキはそう考えている。 もしくは、麻薬の売買にかっている人間がドラッグコントロールかさらに上の管轄のやつらか・・・・・。決して表立ってはいけないものに違いなかった。それ以上、想像はできない。 これでドラッグコントロールが二人の旅を妨害することはなくなったかもしれないが、二人の求める「ブルーヘブン」はまだ姿を消していない。麻薬にも似た甘美な存在が。 「あー・・・・・くそ。わかんねえな・・・。引っ掻き回されるだけ回されて終わりってやつかよ」 両手を頭に突っ込んでかき回す。麻薬組織云々についてとやかく言うわけでも何でもないが、妙な引っかかりだけが残って腹立たしい。 「で?二人はもう帰ったのか?」 「うん。もう家に帰るって」 「9thも?」 「うん。もう本部に帰らなきゃって。また縁があったら会いましょうって言ってたよ」 「ほ〜・・・・・・・そうか」 完全に打ち切りだ。9thとも5thとも会いそうにない。どうやら本格的にこの問題はドラッグコントロールの深部にあたるらしい。イツキの知ったところではないが、やはり引っ掻き回された身としてはいささか腑に落ちない部分が多い。 「結局、ブルーヘブンと麻薬の繋がりはわかんねえままか・・・・」 「うん・・・・・」 「会って聞きてえな、ブルーヘブンに」 「でもそれでわかるのかなあ?あの嫌な麻薬、ブルーヘブンっていう名前だけかも、だよ?」 イツキは上半身を起き上がらせた。先ほどのような立ちくらみは起きない。大分体が目覚めてきたのだろう。 「いや・・・・・俺は絶対やつが絡んでいると思う」 「どうして?」 「まず名前。こんな名前つけねえだろ?次に効果。会いたい者になり、共に歩むのが俺たちの求める「ブルーヘブン」。そして薬は「会いたい者を適当な人間に投影させ、会いたい欲求を奮い立たせる」ものだ。似すぎている・・・どっちも、追いかけるようにできている・・・・・相手や、ブルーヘブンを」 頭の中で鳴り響く。女の声で、追いかけてと誘う鳥。イツキやタイザーをさんざん悩ませ、欲情させる青い鳥。 今さらだが、ふと怖いものが背中をなぞった。 「うーん・・・ブルーヘブンは追いかけて欲しいのかなあ?僕たちみたいな人たちに」 イツキは「さあ?」と肩をすくめながら体を枕に倒す。タイザーもため息交じりに布団に顎を乗せ、犬のように上目でイツキを見つめた。 「追いかけて、僕たちの願いを叶えて一緒に歩んで・・・・じゃあブルーヘブンの意志は何?どうして欲しいんだろう?どうしてその姿になりたいんだろう、僕たちの願う人たちに」 イツキは思わず目を見開いてタイザーを見下ろし、大げさに瞬きをした。 「お前・・・・・ちったあ考えれるようになったんだなあ・・・・・お兄さんびっくり」 「何感心してるんだよ!僕だって考えれるよ!」 「へーへ、そーですか。そーでしたか」 「もう!」 へらへらと笑いを浮かべるイツキに対し、タイザーは頬をぱんぱんに膨らましたが、お互いの間に流れる空気があまりに通常と変わらないため、タイザーは思わず顔を緩めてしまったがバレると悔しいので顔を伏せる。 「じゃあ、お前ならどうだ?もし自分がブルーヘブンだとして、大勢の・・・俺たちみてえなやつが追いかける・・・・望みを持ちながらな。中には・・・・死んだものの姿を追い求めるとしたら」 タイザーはひょこりと顔を上げ、瞳を半分にしながら「うー」とうなって腕を組む。 「僕だったら・・・・僕だったらかあ・・・・。難しいよ・・・。じゃあ、いっきーは?」 「俺?俺か?・・・・そうだなあ・・・・きれいなねーちゃんだったら、嬉しくてたまんないね」 「変態」 「結構結構。・・・・つまり、そういうことかもな」 「え?え?」 「考えれるんだろ?じゃあ考えてみろよ」 言って、イツキはまたずるずると布団に潜った。 予想が間違っていなければ。 ブルーヘブンの望みは「追いかけられること」。 タイザーが孤独でぬくもりに飢えるように。ブルーヘブンも飢えているのではないかと。 でも孤独を埋める手段を知らなくて、餌で釣るような真似をする。会いたい人に会えると、願いを叶えると囁きながらも自分の願いを叶える。 とはいえ、こればかりは会わなければわからない。それにイツキもまだ願いは叶っていない。どちらにしてもブルーヘブンを追いかける以外はない。 ぴく、とイツキの耳が無意識に反応した。空気にひずみが生じる。 「・・・やれやれ」 大きく息をついて何もない窓際を見る。今日の空ものっぺりと青いスクリーンが張り付いている。そこには誰もいないはずだが、イツキの目にはしっかりとその姿が浮かんでいる。 「??」 タイザーは不思議そうに同じ方向を見る。やはり誰もいないはずだが、イツキは半身を起して窓を睨んだ。 「・・・・9th。お別れじゃねえのかよ」 「あら。冷たい」 す、と風から生まれたように均整のとれた体つきが浮かぶ。石膏像のような肉体美だが残念なことに、今日もつなぎで隠れている。 9thは涼しげな目元をさらに細め、口もとに手を添えた。 「貧相な体つきになったわね」 「会って早々その台詞か?男に振られるぞ」 「いいわよ別に」 9thは近くにあった椅子に座る。その姿をタイザーはぽかんと見つめることしかできなかった。9thはひっそりと慈愛の笑みを浮かべ、目を丸くするタイザーの頭をそっと撫でた。 「偉かったわね、タイザーちゃん。看病御苦労さま」 「う、うん・・・あ、ありがとう」 タイザーは照れ臭そうに顔をそむけ、9thは音もなく手を離した。その顔にもう柔らかさはない。いつもの鋭さがイツキを刺す。 「・・・・イツキ、タイザーちゃん。聞いたと思うけど、この件からドラッグコントロールは抜けるわ」 「どうしてだ?引っ掻き回してくれたんだ、理由ぐらい言えよ」 「ドラッグコントロールが手を引く、その意味はわかってるわよね?上からの命令には逆らえない。・・・・ただ」 「ただ?」 9thは目線を反らし、皮肉そうに口元をゆがめた。彼女にしては珍しい表情だ。 「あなたたちの言う「青い鳥」というのは嘘じゃないのね・・・・・」 今更かよ・・・・とぼやく前にぴくぴくと頬が痙攣する。 「・・・・どうして今更?」 「手を引いた理由の一つね。麻薬だけれど麻薬ではない。人を狂わすものだ、と聞いたわ」 イツキとタイザーは顔を見合わせると同時に瞬きをして9thに顔を向けた。 「狂わす?」 「そう。ブルーヘブンは人を取り込み、求めるものとなり、共に歩み、人を食らい、人になりたくてまた求む・・・・」 「なんだそりゃ・・・・いやなループだな・・・」 「つまりは、そういうことよ」 やはりわからず、瞬きをする。9thの台詞はイツキたちブルーヘブンを追う者だったらわかる単語ばかりだ。わかりきっている以上に、それだからこそブルーヘブンを求めている。 それなのに何かが違う。相違点は見つからず、イツキが考えているうちに9thは言葉を続けた。 「これ以上は聞かないで。・・・・・もしかすると、いずれわかるかもしれない。また同じようなモノが市場にでてしまうかもしれない・・・いえ、このままいくと出てしまうのかもしれないわ。・・・・そうしたらわかる。あなたたちが再びそれに関わるのであれば」 「何かのなぞなぞみてえだな。占い師辺りが言いそうだな」 「・・・・そう。あともう2つ。1つは忠告。ブルーヘブンの歌に気をつけて」 「・・・・歌?」 9thはそれについてそれ以上言わない。多分、これが暗部なのだろうか。意味はわからないが、頷くしかできない。 「そして最後に。・・・・これ」 何かの切れ端のメモをイツキの腹の上に乗せ、タイザーが拾った。 「退院したら行ってみると思うわ」 「9thねーちゃん、これどっかの住所だよ?何かあるの?」 ぴくりと少しだけ表情が動いたが、また元の彫刻のような整った顔に戻った。 「何もなく、何かがある・・・・。これで、少しだけブルーヘブンのことがわかるわ。おそらく・・・あなたたちの知らない一面が」 ゆっくり9thは立ち上がる。9thの気配が薄らぐ。本当に、もう・・・会うことはなさそうだ。 「さ。これでお別れね」 「えー・・・・・・・」 タイザーは名残惜しそうに9thを上目に見る。9thはちょっとだけ嬉しそうな顔になった。 「そもそも、こんなに関わること自体珍しいのよ?・・・・・それだからこそ、また。きっと会う機会があるわ」 「む〜・・・・そっか・・・。じゃあ、またブルーヘブンの捜索が始まったら会えるよね?」 「ええ。そうね」 「あ、9th」 すでに背を向けた9thは振り返らないまま「何?」と短く尋ねる。 「姉貴・・・・・キシュリーに伝言を。・・・・どうやら、俺は平気らしい。病気でも何でもないってさ。以上」 「わかったわ。残念ね。向こうの世界はきれいなお姉さんがたくさんいるって聞いたのに。羽の生えた、お姉さんたちが」 「まったくもって、残念なかぎりさ」 9thの表情はわからないが、どうやら笑っているらしかった。 「じゃあ」 軽く羽ばたく音がして、9thの姿は掻き消えた。 「あーあ。もっと話したかったなー」 「まあ、また会えるだろ?キシュリーとも繋がってるわけだしな」 「そうだね」 笑顔でうなずくと、メモを見た。 「ここからすぐ近くの町だね・・・・・・あ、この人を訪ねろだって」 「へえ?女?」 タイザーは頬を膨らませてぐっとイツキをにらむ。 「すぐそうなんだから!えっと・・・・・・む〜・・・・・」 さらに頬を膨らませる。目に見えてがっかりしていることがわかり、イツキは思わず笑ってしまった。 「残念って言いたかった〜・・・・・これ、女の人の名前だよ」 「ほー、そーかそーか。で、その名前は?大体、女ってのは名前で決まるんだよ。いーい女にはあまーくていーい名前がつくもんだ」 「なんだよ、それ・・・僕はどーせ、いーい名前じゃないって言うんでしょーだ」 ぼす、と布団を殴る。布団越しとはいえ、腹を見事に直撃した。 「ちょ、あのなあ!まだ何も言ってねえだろ!ったく、病人なんだぞ・・・・」 「ふん!」 はちきれんばかりに頬をふくらませ、そっぽを向く。 「はいはいはい、タイザーちゃんはかわいい名前ですよー・・・・これでいいか?」 「うー・・・・!ばか!」 単純に見えるタイザーだが、中々に気難しい。イツキは黙ることにした。 「・・・・・・・・」 タイザーはむすっと怒った目のまま、ちらりとイツキを見るとメモに目を戻す。 「・・・・えっとね・・・・・アイラ・・・・アイラシェリだって」 「え・・・・・・・・」 イツキの瞳孔がみるみる縮んでいく。何もしていないのに体中がびっしょり濡れて凍え始める。 頭が回らない。舌が渇く。手足が遠くに沈んでいく。 「もう一度・・・・・」 「だ〜か〜ら!アイラシェリっていうオンナノヒト!」 イツキの脳内で何かが弾けた。 否が応でも記憶が逆流する。 アイラシェリ。兄の愛しい女。ブルーヘブンが見せた女。 記憶の中にいつもいる彼女。暖かい体の感触が全身に走る。もう捨てたいのに、捨てきれない唯一の夢。 どうして今頃。現実となって現れようとするのか。 夢だけでも精一杯の頭に、これ以上何を。 「い、いっきー!?どうしたの!具合、悪いの?」 「あ・・・・・?」 イツキの額に、じっとりと脂汗がにじむ。みるみると玉になり、頬を伝う。言い表せない不快感に胃が踊る。 「いや・・・・・・・・」 イツキは口元を押さえる。吐きたい、いや違う。逆流しているのは記憶だけだ。何もない、体は何も。 タイザーははらはらしながらイツキを必死に覗き込んだ。また泣きそうだ。悲壮感が瞳にくっきり映っている。 「何でも・・・・ない・・・・・」 「うそ!僕、先生呼んでくるね!」 「大丈夫・・・・・平気だ・・・いいから」 手足が震える。血がどこかへ落ちていく。真っ白になりそうだ。 「でも・・・・!」 「座ってろ!」 イツキはタイザーの手を引っ張ると、無理やりその場に座らせた。 「・・・・悪い。・・・・疲れた・・・ちょっと寝るわ・・・・・・」 「うん・・・・わかった・・・・」 イツキはそのまま目を瞑る。記憶が飛び出ないように、封じるように、しっかりと。 それなのに浮かんでしまう。あの日のアイラシェリを。鳥になる、アイラシェリの姿を。 ブルーヘブンは誰? アイラ、お前だったのか・・・アイラシェリという人物は、最初から俺たちの求めるブルーヘブンだったと言いたいのか? 兄貴、知ってるのか?わかってたら、教えてくれよ。笑ってないでさ。 アキ兄・・・・・・ アイラ・・・・・・
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