36・砂漠

 車に揺られ、砂が舞う。がたんと揺さぶられ頭を打った。
 鼓膜に残る悲痛な余韻。どれだけ泣いても、泣いても、どうしようもない。どうすることもできない。
 イツキは目を瞑る。そこに誰も映らない。

「やめた方がいい・・・・・ブルーヘブンは、願ってはいけないもんなんだ・・・・・」

 それは、予想でしかない。予想であってほしい。

 でも当たっていたら?

「まだ、引き返せる・・・・・・・」

 きっと、絶対タイザーは泣いてるだろう。それでも、やめなくてはならない。

 欲しいものも、得たいと思うものも全て消えていくから。

 求めようとする家族が消えていくから・・・だからやめなくてはいけない。

 自分との別れなんかで悲しい思いをする以上に、悲しい思いをする前に。

 エンジンの音が、遠くなって消えていく。意識がぽちゃんと池に落ちる。

 さざめく水面の上にふ、と兄の顔が見えた気がした。




          Heaven?


 どうして追いかけなかったんだろう。追いつけたはずなのに。

 なんとなく、わかっていた。感じた。その酷い嘘を。

 まだ言葉にできないけれど、それはきっとすれ違いの、優しさ。

 頭には何も浮かばない。誰の声も聞こえない。対内を駆ける血潮の音すら聞こえない静寂の中、タイザーは一人砂漠を歩く。

 一陣の砂嵐が吹いた。砂がわめく声しか聞こえない。ふざけた声は、聞こえない。笑う声も。ただの耳鳴りしか聞こえない。

 ざりざりと、歩く足が重い。足かせでもついているのかもしれない。膝まで埋まった足はこのまま折れてしまえばいいとさえ思った。

「・・・・・・・・・」

 広い広い砂漠に、タイザーはたった一人。世界にたった一人で立っているような気がした。

「・・・疲れた・・・」

 ぱた、と仰向けに倒れた。砂の粒がクッションとなり、やわらかくタイザーの背中を受け止める。砂煙が少し立ち、星屑のように月にやわらかく反射した。太陽の熱を吸収した砂はぽかぽかと暖かい。

「・・・・・・・」

 イツキと出会う前はずっとこうだった。わけもわからず砂漠を歩き、どうしていいかわからず寝転がり、星の数を数えて泣いた。

 何度も何度も繰り返していくうちに、涙は砂が吸い上げ、月明かりは家族の顔を消した。

 今ではわからない。家族がどういう人だったか。

 思い出せるのは、逃げていくときの恐怖に笑う醜い顔だけ。それすら最近は思いだしていなかった。

「・・・・・・・・・昔に、戻っただけだよ・・・・・・・・・・・」

 冷たく涙が流れる。そのまま死んでしまったように動きを止める。このまま眠ってしまえば、何事もなかったように次の日が来れば何もかも忘れて昔に戻れる、そう願ってタイザーは目を瞑る。

 ふ、と風の匂いが変わった。泥のような生臭さと血の混じった異臭が太陽の匂いと混じって鼻を通る。

「ねずみがにわに」

 ゆっくり起き上がり、気配をめぐらせる。こんな時でも体は反応する。無意識に銃の存在を確認、マントの中に潜んでいるのを冷たく捉える。

「とらえろタイザー。めうしがはたけに、おいだせはやく・・・・・・」

 匂いが濃厚になる。二人・・・・いや、三人・・・匂いがそこで途切れる。これなら大した集団ではない。

「僕の敵じゃなね」

 ルガーP90を両手に装備する。冷たかったグリップが徐々に体温を持ち始める。とくん、とくんと銃と共に脈打つ。
 目を瞑り、呼吸を整える。鼓動を砂漠にあわせる。全てが一致していく感覚が全身を満たし、体を軽くする。

 そうだ、自分にあるのはこれだけ。デザートシーブスたちを倒さなくては、青い鳥を探さなければという使命的な日々。

「ねこがミルクを」

 瞼を開け、空間を縫うように駆ける。体が風と一体化し、砂と共に引き金が軋む。

「いますぐとめろ!」

 砂山をすり抜け、弾丸が確かな手ごたえと悲鳴と共に空に消える。紫煙がうっすら立ち昇り、月と混じった。そうだ、もう夜だった。興奮と冷静の間でタイザーは空を仰ぐ。手に硝煙の臭いが絡みつくが、意識はもうデザートシーブスのことなんて考えていない。

 なんてあっけない。デザートシーブスたちはタイザーを確認する前に跪いて砂に埋もれた。声はない。

「・・・・僕の勝ち・・・・」

 低くつぶやき、ピストルをしまう。鮮やかに赤いマントが舞う。

「・・・・・・・・・」

 砂の声すら聞こえなくなるほど、静かだ。

「・・・いっきー・・・・・・・僕、ちゃんと稼げたよ・・・・・」

 頬を拭う。いつの間にかまた涙が出ていた。流れていることがわかると、次から次へとあふれて止まらない。頭がぐわんぐわんと揺れ、胸が重く引きずられ、呼吸ができなくなる。

 高揚の後に訪れる空虚と、結局倒したとこれで何もならない現実が寒さと共に一気に押し寄せる。

「いっきーの分まで、がんばったよ・・・・・・」

 声を押し殺し、両肩を抱く。どうやってもこれが現実だ。隣には誰もいなくて、砂の中には屍だけ。空には嘲る鳥がいつまでもいつまでも勝手に誘う。

「ふ・・・・・・・・ぅう・・・・・・・・・」

 そのまましゃがみこむ。小さくてつぶれそうな体は消えてなくなりそうなほど、小さく丸まる。

「うう・・・・・・・・」

 また風の匂いが濃くなる。こんなにも辛くてさびしいのであれば、いっそずっと盗賊たちを狩り続ければいい。

 もう一度倒そう。そうしているうちにきっと麻痺して、いつもの生活に戻れる。

 憎くてしかたのない盗賊たちを倒して、倒して、倒して、家族の顔を消して、青い鳥だけを見つめるあの日々に。

「うっく・・・・・・・・・・」

 ばし、と頭を叩き、立ち上がる。泣いている場合ではない。目を擦り、あたりを探る。
 静かな砂の中でたった一つ、影を見つける。薄闇の中、一層濃く暗闇を落として歩いている。今度は一人だ。

「一人で・・・・・・・?」

 ふ、とイツキを見つけた時のことを思い出す。
 たった一人で、砂漠に野宿する妙なやつ。何となく、自分と似たような人物だと思った。飢えてる人だと。あの影にブルーヘブンの羽を見たような気がした。今となっては気のせいかもしれないけれど。

「・・・・・・・・」

 無駄だとわかりながらも、少しだけ期待して気配を追う。
 やはり一人だ。しかし体格が違う。イツキの倍以上あるかと思う、しっかりした体つき。そして黒い服。
 タイザーは力なく笑い、銃を向ける。だんだん麻痺してきた。
 引き金が軋む。いつもなら軽く感じるトリガーも、今日は水気を吸ったように重い。それでも躊躇なく一気に引き抜く。

 再び舞い上がる青白い細い煙。後から銃声が虚しく響く。

「・・・・・・・・・?」

 手ごたえがない。いつもだったらすぐさま手に来る確かな感覚と痛みが軽い。

「しま・・・・・・・・・・・」

 その意味を知る前にタイザーは急いで体を伏せ、転る。その勢いのまま立ち上がり、ピストルを構える。
 砂の山が削り取られ、隠れる場所を失った。銃の種類はマシンガンか。だとしたら次に攻撃が来たら避けれる自信はない。

 緊張が走り、唾すら飲み込めない。喉が急速に乾いていく。砂に体温を奪われる。切り落とすような酷い軋み。銃が、まだ撃つなとタイザーに言い聞かせる。

「!?」

 一瞬、白昼夢のような浮遊感に襲われる。視野がぼやけ、後ろに刹那の殺気をぞくりと感じた。タイザーは振り返り、ピストルを向ける。もう間に合わない。

「・・・・・・あ・・・・・・・」

 タイザーの目が丸く点になる。攻撃は来ない。それどころか、殺気が嘘のように消えている。
 黒い塊が月光でやんわりと形を作る。隠れた顔が遠くに現れ、タイザーは口を開いた。

「マ・・・・マルアス・・・・?」
「・・・・・・・・・・あの時の子供か・・・」

 低い声に痛々しい敵意はない。マルアスはゆっくりとサブマシンガンを下ろし、タイザーに背を向けた。

 タイザーは急いで二丁ともマントに入れると、マルアスの名前を呼んだ。マルアスは一歩進んで止まり、振りかえる。

「えっと・・・・・・」

 なぜ叫んでまで止めたのかタイザー自身もわかっていない。ただ、気がつくと呼んでいた。

「・・・・・・なんだ」

 タイザーはもう一度呼ぶと、走って隣に立った。相変わらず体は大きく、月を隠す。黒い姿が余計に黒い闇に落ちていく。畏怖を感じる堂々とした姿に一瞬ひるみそうになるが、今日は安堵すら覚える。

「どうして・・・どうしてこんなところにいるんだよ・・・デザートシーブスかと思った・・・・」

 マルアスは目だけを動かし、タイザーをじっと見下ろす。その目に敵意もなければこれといった感情もない。よけいに黒く冷たく感じる。

「・・・・・・・・一人か・・・・・・・あの男はどうした」

 抑揚なくつぶやくと、タイザーの肩がわずかに反応した。

「・・・・・・・・・・・・」
「??」

 マルアスは一度瞬きをしてタイザーを横目に見る。

「・・・・・・・うう」

 ぷるぷると体が小刻みに震えはじめる。赤いマントもかすかに揺れ、黒い月明かりに一滴の涙がぽたりと砂を濡らした。

「う・・・・・・・あああああん!!!」

 一度流れると止まらない。何がどうなったかわからないまま、タイザーは喉がつぶれそうなほど大声を出して泣きはじめた。

「うっく・・・・・っく・・・・・ああああああんん!!!」

 タイザー自身も自分が馬鹿になったと思った。気でも違ったのかと、狂ったのかと思うほど大声を上げて遠くの空にひたすら泣いて、泣いて、不様だと思っても止まらなくて、とにかく泣いた。

 そんなタイザーをどうしていいかわからず、マルアスは茫然とタイザーを見る。影の落ちる顔は何を考えているかわからないが、彼はその場に立ち続けた。

 そして月が落ちてしまいそうなほど、タイザーはそのまま泣き続けた。





 ようやく落ち着き、話せるような状況になったのは月と太陽が同じ場所に居合わせそうなところだった。

「く・・・っく・・・・・・・・・」

 タイザーは必死に涙を拭い、深く深呼吸をした。数度呼吸を繰り返していくうちに喉は落ち着いたが、それでも忘れたころにほろりと涙が出てまた拭う。

 何度も止まっては泣くタイザーを、マルアスは根気よく待った。立ち位置は変わっていない。そのままじっと待っていてくれた。

「・・・・・・・・落ち着いたか」

 タイザーは軽く頷く。一旦涙は止まった。タイザーは正気に戻った瞳を上げ、マルアスを見た。うっすら眼光が瞬き、頷き返したような気がした。

「・・・・ごめんなさい・・」

 真っ赤にはれた目をぎゅっと押さえる。瞼に血液がたまってるように重く、うまく上がらない。
 タイザーは力弱く笑うふりをした。

「マルアス・・・・・・ドラッグコントロールから逃げれたんだね・・・・・ねえ・・・・・ブルーヘブン、探してる?見つかった・・・・?」

 突然の質問にマルアスは片眉を上げ、タイザーを凝視するように目を細めた。

「いっきーね、もうやめるって。探すのやめるって。みんなやめちゃうんだ・・・・・・」
「やめる・・・・?・・・・薬が絡んでいるからか」
「ううん、違うよ・・・・・ドラッグコントロールも、手を引くって」
「なんだと・・・・・・」

 マルアスの目が強く光る。差す光を受けて瞬くマルアスの漆黒の目は意思の強さがわかる。まだ諦めてない人の目をしている。その奥にはおそらく、ブルーヘブン。

「詳しくはわからないよ・・・・でもやめちゃう・・・・・・・僕の旅も・・・・僕は一人で・・・」

 じんわりとまた涙がせりあがる。それを引きちぎるように首を激しく振る。泣いてはだめだ。

「ごめんね。・・・・・僕行くよ」

 マルアスの顔を見る。彼の顔はまるで動いてなかった。どことなく岩に似ている。微動だにしない。タイザーはもう少し微笑もうとしたが、できなかった。顔を崩さないように、マルアスの横を通り過ぎる。

「・・・・・お前もやめるのか」

 タイザーは振り返った。見るとやはり、マルアスはしゃべっているのかわからないほど動いていない。

「・・・・・・・・僕・・・・」

 欲しいもの。家族よりも、欲しいもの。
 ただそこにいて欲しいと、願うもの。

「・・・・・・・僕、まだ天国を手に入れてないよ・・・」

 遠くでイツキがへらへら笑っている。たった数時間で、おぼろげなものになっていた。

「・・・・・・・そうか」

 マルアスがようやく動いた。少しだけ息が漏れた。

「来い」

 短く言うと、マルアスは踵を返して砂漠を闊歩し始めた。まとわりつく砂が逃げるように、マルアスの足は堂々と前へ進む。

「え・・・・?」

 タイザーは首を傾げるが、その大きな広がった背中は「ついてこい」とわずかだがオーラを送っていた。それ以上は何も言わない。
 どうするか少し躊躇し、それでもタイザーは付いていくことにした。





 無言の時を数分、数時間と過ごた。スモークがかった太陽がぬるく砂地を舐める。遠くを見つめ、そこに街があるのを確認するとマルアスは足早に近づいていった。

 門をくぐる。寂れた街だ。もう何年かするとゴーストタウンになって、砂漠の下敷きになってしまうかもしれない。いや、もうすでにゴーストタウンと化しているのか。それほど街に人はなく、店もなく、建物の風化寸前だった。

「ここは?」

 マルアスは相変わらず前を進んだまま話さない。これはどう訪ねても話さないだろうと思い、タイザーは周りを見ることに専念した。何かあれば彼から話すだろう。

 霞んだ空が広がり始めた。いつも見ている空のはずなのに、この街ではきな臭く眼前に広がる。その中を時折、ぼろぼろの洋服を着た人たちが浮遊し、ある者はごろりと寝ころんでいる。生きているのか死んでいるのか見分けは付かなかった。ただ動かないで寝ている。

 タイザーは少し怖くなり、マルアスとの距離を縮めた。そのまま数歩歩く。

「ここだ」

 道を曲がった先には一軒しか家がなかった。いよいよ世界に取り残されたようで背筋が寒い。

「えっと、ここ・・・・?」

 しかも目的の場所はここらしい。これ以上何か恐ろしいものが出てきたら、タイザーの心臓はもしかすると持たないかもしれない。不整脈を続ける体がぶるぶると震えるが、マルアスは構わず扉を開いた。壊れそうな音がして、タイザーの肩は大げさなぐらい飛びのいた。

「入れ」
「う・・・・・・」

 ここまで来てしまったのだ、とタイザーは意を決してマルアスと共に家に入った。

「あ」

 次は何!?タイザーは身をこわばらせたが、以外にも甲高い声が聞こえた。よくよく脳内でリピートしてみると、それは自分よりもさらに幼い子供の声だとわかる。

「おじちゃん!」

 マルアスの巨体で前の様子がわからないので、横に出てみる。思わず「あ」と声が出そうになった。

 女の子だった。5歳ぐらいだろうか。無邪気な笑顔を満面にマルアスに向けて、手を後ろに組んでもじもじしている。身なりは街の人たちにくらべ、少しだけだがいい服を着ている。服装抜きにしても、輝く笑顔はこの街に不相応に見えてタイザーは混乱した。だがこれだけではない。

「お帰りなさい!」
「ただいま」

 少女は転びそうなほど早く走り、マルアスの太い足にしがみつく。マルアスはこれまで見せたことない慈愛のにじみ出た笑みをわずかに浮かべて少女の頭を撫でた。

「あ!マルアスおじちゃん!」
「おじちゃん!」
「え?え?」

 一人だけではなかった。奥から次々に人が飛び出てきた。どの子もタイザーより小さい、子供と言うより幼児ばかりだった。

 それぞれ、嬉しそうに笑顔を浮かべてマルアスに絡みつく。無邪気な彼らをマルアスは一人一人名を呼んで頭を撫でた。これまで抱いていたマルアスのイメージが一気に変わり、タイザーはめまいを覚えた。

「マルアスおじさん」

 最後に落ち着いた少女の声が現れた。タイザーよりも少し幼いだろうか、それにしては随分としっかりとした眼差しを持っている。微笑むくちびるや頬はバラ色に染まり、はにかんだ笑みでマルアスを迎える。

「お帰りなさい」

 大人びた仕草でマルアスの腕を取ると、嬉しそうに目じりを下げた。

「ただいま。・・・・・ほら」

 マルアスも少し微笑むと、懐から重そうな巾着を取り出して少女に投げた。中をのぞくと、子供たちは一斉に歓声を上げて飛び跳ね始めた。

「こんなにたくさんのお金・・・・・ありがとう」

 少女は花のように細く笑うと、巾着を握り締めた。歓声でにぎわう中、タイザーはぼんやりと少女と子供たち、マルアスを見てはぱくぱくと魚のように口を開けた。何を言っていいかまるでわからない。
 きょろきょろとしていると、少女と目が合った。自分よりも年下なのに、彼女はどきりとするほど優しく微笑んだ。

「おじさん、そちらの人は?」

 マルアスは少し動揺し、タイザーを横目にちらりと見る。タイザーはわけもわからず頷くと、スカートを握りしめる。

「えっと、ぼ・・・・僕は・・僕はタイザー。シーフラフネスだよ」
「ああ」

 少女の顔がぱっと明るくなった。

「おじさんの仲間ね。おじさんもシーフラフネスだから」
「!?」

 驚いてマルアスを見る。ぴくりとも動かなかったが、目線だけは「しゃべるな」と訴えている。暖かい色に染まり始めていた瞳が急速に冷める。タイザーは仕方なしに目で頷く。

「さあさあ二人とも、こちらへ」
「おじさんはやくー!」
「こっちだよ!」
「お話、聞かせてね」

 どういうことかわからず、タイザーは幼児たちに引っ張られていく。

 たくさんの手はとても暖かく、タイザーは少しだけ、少しだけだが気持ちが和らいだ。

 罪を犯したから賞金首になったであろう、マルアスはこうして何とか保っているのだろう。追われて擦り切れる日々と、逃げなくてはいけないという焦燥、ブルーヘブンの誘い・・・欠けた心がここで補われている、あの目を見ればわかる。あんなに柔らかいオーラを背負うマルアスは初めて見た。

「そっか・・・・・」

 彼は何も言わないが、きっとこの暖かさを自分にも分けてくれたのだ。

 タイザーの顔に自然の笑みが戻り、泣きたくなった。







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