終章・Heaven!

 スイカのような恋をして
 星のように通り過ぎ
 青い汁を滴らし
 冷たく長い眠りを見る
 冬は遠く春は来ず
 夏は倒れて秋壊れる
 瞬きさえ封じ込め
 二度と季節は巡らない




          Heaven?


 イツキの頬が、夕日に照らされ赤く光る。少しだけ、顔は明るい。眠る表情はゆらりとたゆたう水面のように穏やかで、胸は心地よく上下する。

 全てが消え、全ては何もなくなった。理由も目的も。青い鳥も。

 だからもう、青い恐怖はなくなったのだ。偽りの天国も。

 医者は言う。病気は、不思議なことに抑えられた。この先酷い状況にはならないだろう、と。

 タイザーもキシュリー、笑った。笑って泣いた。知らずの間に張り巡らされた緊張と言う名の蜘蛛の巣は捨てられ、柔らかい思いだけが溢れる。

 それもつかの間だった。

 イツキは眠る。起きてよと問いかけても。懇々と。

 次の日も・・・次の日も。

 イツキは目覚めない。

「いっきー・・・・・・」

 タイザーはイツキの体を揺らす。ベッドに放り出された体はかくかくと無気力に揺れるだけだ。

「起きて・・・・朝だよ・・・・・・」

 どうして?どうして、目覚めないの?

 連れて行かないで。

 連れて行かないで、ブルーヘブン。

 君の天国に、連れて行かないで。

 青い、真っ青な空の彼方に、連れて行かないで。

 僕の最後のわがままだよ。

 君は一人で行きたくないかもしれない。でも僕も一人で行きたくない。

 寂しいのは、もうやだよ・・・・。

「朝だよ・・・・?ほら、見て。すごく奇麗な空なんだ・・・とっても青くて・・・」

 とろけるように。ブルーヘブン。どこまでも青く。

「起きて・・・お願い・・・起きてよ・・・・・いっきー・・・・・」

 天国に、一人で行けなかったの?だから連れて行ってしまったの?

 僕に、君の孤独をなめさせるの?

 それが・・・・僕に対する復讐なの・・・・?

 君を殺した、罰?

「起きて・・・・・・」

 起きて。

 起きて僕と遊ぼうよ。

 くだらない話とかさ、他愛もないジョークとかさ、馬鹿みたいな行動とかさ。

 呆れるぐらい、どうでもいい遊びをしようよ。いつもみたいに、馬鹿みたいなこと言って。

 ねえ。起きて。笑って?

 僕に何か言って・・・・。


「・・・・・・・イツキ・・・・・・・」


 タイザーはそっとイツキのくちびるに触れた。

 まるで、魔法を解くみたいに、静かに。

 全てを呼び起こそうと、必死に。

 それでもイツキは目を覚まさなかった。

 ただ、眠る。

 いつまでも。



 いつまでも。




 追いかけて、馬鹿な人。
 私はここにいる。



 ・・・to the heaven.


おわり




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